【コラム】メンタルヘルスマネジメント第3回
~ラインケアの感情コントロール~

今回はアンガーマネジメントのご紹介です。

ラインケアの実践で注意すべき事項として職場のハラスメントがあげられます。

例えば、思うような業務対応ができていない部下に対して、感情的な言動で人格や尊厳を傷つけ、職場環境を悪化させるなどです。

このような職場のハラスメントを発生させないためにも職場のリーダーには感情コントロールのスキルが必要とされています。そして感情コントロールの手法のひとつに「アンガーマネジメント」があります。

アンガーマネジメントは、「怒りの感情」や「行動」の背景にある認知に焦点を当て、自らの力で感情をコントロールできるようになることを目指した認知心理学の理論等に基づいた方法です。

実践には衝動、思考、行動をコントロールすることがポイントになります。

まず衝動的に反応しないことが重要です。例えば、何度注意してもミスが多い部下の態度が反抗的だったりしたとき、感情的に怒鳴ったりせず、ひと呼吸ついて、心の中で「大丈夫」とか「落ち着け」といった言葉をつぶやくことで、少し冷静になれます。怒りのピークは数秒といわれていますので、この数秒間に衝動的に反応しないことが大切です。

怒りは突然沸き上がってくるものではなく、自分の思い通りにならないネガティブな感情が膨れ上がって、心のキャパシティーを超えたときに怒りの感情につながると言われています。つまり怒りは2次的な感情なのです。これを防ぐには、ネガティブな感情をため込まないことも必要ですが、心のキャパシティーを大きくしていくことも必要です。

それにはまず、自分が持っている思考(物事の考え方、捉え方、価値観など)を知ることが重要です。

あなたにとって自分を怒らせる原因は何でしょうか。それは部下そのものや部下の言動でしょうか。実はそうではなく、自分の考え方の傾向や価値観が、怒りの原因を作り出しているのです。自分の持っている思考、信念(こうあるべきという思い)が目の前の現実(思う通りになっていない)と相いれないときに、怒りの感情が生まれます。その時、本当に怒るべきなのは自分にとって「許容できない領域」にあるものです。それ以外は怒る必要がないのです。許容範囲をできるだけ広げて、許せない範囲を減らすことができれば、怒りの感情にとらわれる機会も減らせるのです。

最後のひとつは、自分でコントロールできるものとそうでないものを区別して対処するというものです。思い通りに対応してくれない部下を直接コントロールすることはできませんので、まず、その現実を受け止めたうえで、別の対応を実践することが求められます。指示したから、命令したからそれをやるのが当たり前ではなく、やってもらいたいことの趣旨や目的が伝わっているのか、なぜできないではなく、どうしたらできるのかをサポートするなど自分ができる対処法を実践していきましょう。

このようにアンガーマネジメントは感情を適切に扱い、良好な関係を構築する有効な手法なのです。

著者

宮川 浩一(宮川 浩一)- Koichi Miyagawa

株式会社NextEAP
代表取締役

一般社団法人中小企業EAP普及推進協議会
代表理事
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